こんにちは!
教養派アート入門メディア『3L museum』を運営している、白くま館長(@3Lmuseum)です。
観察力を鍛えるワークショップへようこそ!
今回のワークショップでは、写実的だけど幻想的な印象の絵画を使って進めていきます!
所要時間は約5分です!
また、このワークショップでは次のものを必要とします。
ありあわせで大丈夫なので、読み進める前に手元に用意しておいてください!
作品を見てみよう!
それでは、今回のワークショップで使用する作品の紹介です!
まずは2分間で「アウトプット鑑賞」をしてみましょう!
作品を見て「気づいたこと」や「感じたこと」を自由に書き出してみてください!
あなたは気づいた?サクッとチェック
ここでちょっと難易度の高いチェックポイントを紹介します! あなたは気がつきましたか?
どこからそう感じた?
次は自分の感想の中から1つ選んで、「どこからそう思ったのか」を深掘りしてみましょう!
より鮮明に観察することができるようになります。
例えば、以下のような感じです!
「一番手前にいる女性がかわいそうに思えた」
→手前の女性だけ服装が派手じゃない。魚の餌を与える役もしているし、表情も元気がなさそう。
「この絵の舞台はどこか気になった。」
→すごく綺麗な場所で現実みたいに緻密に描かれているけど、ここはどこなのだろう? 理想的過ぎてなんだか逆に不自然さを感じた。
ぱっと頭に浮かぶことで大丈夫です。それでは気楽に1分間でやってみましょう!
この作品はどんな作品?
今回、ワークショップで使った作品は、ローレンス・アルマ=タデマ(Lawrence Alma-Tadema)というイギリスの画家が描いた『銀色のお気に入り(Silver Favourites)』です。
タデマが生きた年代は1836〜1912年で、活躍したのヴィクトリア朝時代となります。
タデマの作風は、古代ローマ・古代ギリシア・古代エジプトなどの歴史をテーマにした写実的なものが多くみられます。
彼の作品は、ハリウッド映画の初期に制作された歴史映画などに多大な影響を与えたと言われています。
この作品のテーマ
上述したように、タデマの作品は歴史をテーマにしたものが主流です。
ただ、今回の作品『銀色のお気に入り』は、1800年代のイギリスの代表的な詩人であるワーズワースの詩「花瓶の中の金と銀の魚『Gold and Silver Fishes in the Vase)』から着想を得たものとなっているようです。
この詩が表現している内容は「水槽の魚が過ごしている囚われの生活は、魚たちにとってどのようなものであるか測り知れないが、私たち鑑賞者からすればとても愛らしく満たされるものだ」というものです。
この詩の内容と描かれている内容は、掛けられていると推察できます。
この作品に「囚われている」女性たちは、この詩で言及されている魚たちの比喩であるということなのでしょう。
実際、女性たちは3人ともどこかエネルギーに欠けており、退屈そうであったり無力感に支配されていたりするようにも受け取れます。
この作品の考察
テーマは上記の通りですが、この作品にはもう1つの観点があると思います。
それは、描かれている3人の女性の中にも差や関係性があるということです。
服装と表情に着目してみると、それがはっきり分かると思います。
一番手前の女性が地味な服装で無力感に支配されているような印象を受けるのに対し、ほかの2人は華やかな服装であり、無力感というよりは退屈そうな印象です。
これは手前の女性の方が身分が低く、ほかの2人の方が高いことを示しているのではないかと思います。
サービスをする側と受ける側という風にも解釈できそうですね。
この女性たちの関係性については明確に示されているわけではなく、あくまで考察となります。
しかし、このような観察をもとにして独自の解釈を加えていくと、ただキャプションを読んで理解するだけではなく、とても貴重な鑑賞となるはずです。
この作品をあなたはどう思う?
では最後に、この作品を観てあなたは今どう思いますか?
作品をよく観察し、背景を知ったあなただからこそ出てくる感想がきっとあるはずです。
自由に書き出してみましょう!
ここでほかの人の感想も紹介させていただきますね。
「妙に綺麗な場所の絵だなと思っていたけれど、水槽の中の魚と掛けられていると知って腑に落ちた。整備されている代わりに自由がないことが表現されていたのか。こういう仕掛けは面白いと思う。」
「最初に見たときは好きだったけれど、背景を知ったら少し怖さがあるなと思った。知らない状態の方が好きだったかもしれない。」
まとめ
今回は歴史や詩といったテーマを主に描いたタデマの絵を紹介しました!
最後に、この記事のポイントを簡単にまとめると以下のとおりです。
・今回の絵は人気の詩人の詩をテーマにした作品。
→その詩の内容を知ることで新たな視点で作品を見られるようになるという仕掛けがあった。
・詩の内容とは関係なく、描かれている女性たちには明らかな差があった。
→服装や表情に注目するとそういった差や関係性に気づくことができ、観察力を磨くことができる。
以上で今回のワークショップは終了です!
今回の作品のように、一見単純に綺麗と感じる絵にも裏があって本当に奥深いです。
みなさんのお気に入りの作品をもう一度見返してみると、新たな発見があるかもしれませんね。