観察力を鍛えるワークショップ Vol.11

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こんにちは!
教養派アート入門メディア『3L museum』を運営している、白くま館長@3Lmuseum)です。

観察力を鍛えるワークショップへようこそ!

今回のワークショップでは、一見すると果実が描かれただけのシンプルな作品を使って進めていきます。

所要時間は約5分です!

また、このワークショップでは次のものを必要とします。

ありあわせで大丈夫なので、読み進める前に手元に用意しておいてください!

・文字が書ける紙
・鉛筆・シャープペン・ボールペンなど

目次

作品を見てみよう!

それでは作品の紹介です!

まずは2分間で「アウトプット鑑賞」をしてみましょう!

作品を見て「気づいたこと」や「感じたこと」を自由に書き出してみてください!

あなたは気づいた?サクッとチェック

ここでちょっと難易度の高いチェックポイントを紹介します! あなたは気がつきましたか?




どこからそう感じた?

次は自分の感想の中から1つ選んで、「どこからそう思ったのか」を深掘りしてみましょう!

より鮮明に観察することができるようになります。例えばこんな感じです!

なんとなく、ぐにゃぐにゃしている印象を受けた
→ずっと観察していると、少し不思議な感覚になると思った。バランスが取れてるようで取れていないのかな。

この絵がとても美しく見えるけどその理由がわからない
→すごくいい雰囲気で見ていて飽きないように思えるけど、描かれているのは普通のリンゴだけ。どうしてそう感じるのかが分からず気になった。

ぱっと頭に浮かぶことで大丈夫です。それでは気楽に1分間でやってみましょう!

この作品はどんな作品?

この作品のタイトルは『リンゴとオレンジのある静物』で、作者はポール・セザンヌです。

ジャンルとしては『静物画』にあたります。

静物画って何?

静物画とは、西洋画のジャンルの1つで、静止した自然物や人工物を対象として描く絵のことです。

静物画をさらに細かく分けると、コレクション画、花束、ヴァニタス、朝食画、晩餐画、台所画などのカテゴリーが存在します。

館長

ヴァニタスについては以前のワークショップで扱いましたね。

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ただし、必ずしも上記のカテゴリーに全ての作品が当てはまるわけではありません。

今回の「リンゴとオレンジのある静物」は果実や食器、テーブルなどが描かれており、台所画の条件を満たしていますが、場所が台所かと聞かれると必ずしもそうとは言い切れません。

そのため、上記のカテゴリーはあくまでも形式上のものと捉えておくのがよさそうです。

ポール・セザンヌって誰?

セザンヌが活躍した時期は主に1880年代〜1900年頃であり、ポスト印象派の画家として紹介されることがしばしばあります。

「ポスト(post)」という言葉は「〜の後」という意味を表すので、「印象派の後」という意味になります。

これはクロード・モネを筆頭に知られる印象派が活躍した後に台頭した画家たちのことを指す意味合いであり、有名な画家だとゴッホやゴーギャンなども該当します。

ポスト印象派として紹介される画家たちのスタイルに共通した一貫性があるわけではなく、単に印象派の後に活躍した画家という括りです。

印象派の一員として活動していたのですが、後に離脱して独自の絵画を追求するようになったそうです。

セザンヌの若い頃はサロンでの落選を繰り返し、彼の作品が評価されるようになったのは晩年の時でした。

さらに、本人が亡くなってからは名声と影響力はどんどん高まり、後の世代に影響を与えるようになったのです。

館長

有名な画家の典型的な例のようでちょっぴり悲しいですね。

この作品の特徴は?

この作品は一見とてもシンプルに見えますが、実はかなり前衛的な工夫を混ぜ込んでいます。

それは『多視点』という要素であり、3つの食器にフォーカスするとその工夫が見えてきます。

そのどれもが見え方が若干おかしくなっており、1つの視点から見たものではないことが分かります。

このような工夫をした理由としては、「食器の上の果実をより果実らしく、セザンヌが感じた美しさを最大限に表現するため」だと言われています。

これは後にピカソやジョルジュ・ブラックといった大物画家が取り組み始める有名な『キュビズム』という技法の発端になったとされています。

事実、この絵を見たキュビズムの始祖であるジョルジュ・ブラックは、それまでほぼ無名の画家出会ったセザンヌに衝撃を受け、大きく讃えたそうです。

この時にはセザンヌはすでに晩年であり、60歳に近い状態でしたが、ついに報われたといった出来事だったようです。

館長

セザンヌ、本当によかったですね……!

この作品をあなたはどう思う?

では最後に、この作品を観てあなたは今どう思いますか?

作品をよく観察し、背景を知ったあなただからこそ出てくる感想がきっとあるはずです。

館長

自由に書き出してみましょう!

ここでほかの人の感想も紹介させていただきます。

「一見、綺麗なリンゴの絵にしか見えなかったけど、背景にはさりげなく凄い技法が隠されていて、そういうのも評価につながるのかと思った」

「本当に魅力的なリンゴだなあと思っていたけど、それはセザンヌが長い間売れなくても一生をかけて追求した技術の結果だと思うと納得した」

まとめ

今回のワークショップはいかがだったでしょうか?

ポスト印象派として有名なセザンヌの作品を紹介させていただきました!

最後に、この記事のポイントを簡単にまとめると以下のとおりです。

・セザンヌは一見ごくシンプルな静物画に『多視点』という要素を取り入れることにより、リンゴやオレンジといったモチーフを従来の約束事にとらわれず、より美しく描き出すことに成功した。

・後に誕生する『キュビズム』の発端となった。

・単純なモチーフであっても、工夫をこらすことによって魅力的な絵画にすることができる。

・鑑賞していてどことなく惹かれるなと思ったら、そこには構図や技法など、何かしらの要素が隠れていることが多い。

以上で今回のワークショップは終了です!

館長

今後、美術館に訪れた際は、静物画に隠された技法もぜひ探してみてください!

ほかにもワークショップ記事を用意しているので、ぜひチェックしてみてください!

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この記事を書いた人

1996年生まれ。大学卒業後、美術館でナビゲーターとして教育普及に従事。教養としての芸術を広め、芸術に対する価値観やイメージをアップデートしたいという想いから、2021年3月に「3L museum」を開設。牛乳キャップやチロルチョコの包み紙など、芸術的価値があると感じるモノの蒐集が趣味。




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