こんにちは!
教養派アート入門メディア『3L museum』を運営している、白くま館長(@3Lmuseum)です。
今回は、『現代アート』について語っていきます。
日本では「現代アートはゴミ」「そんな大々的に取り上げられる意味がわからない」など、批判的な意見も散見されるジャンルです。
たしかに、「こんなのが作品?」と疑問に思ってしまうことがあります。
現代アートを解説する本などでもよく例に出されますが、ただ小便器にサインを書いただけの作品がアートとして成立し、高い評価を受けてしまうような世界です。
普通に鑑賞していたら、何が面白いのか全く分かりませんよね。
どうしても万人受けすることが難しい現代アートですが、実は普通に鑑賞するだけでは気づけない面白さがそこにはあるんです。
今回は、そんな嫌煙されがちな現代アートの本当の価値がわかる見方を3つご紹介します!
現代アートとは
現代アートの一般的な定義としては、「現代社会の情勢や問題を反映し、批評性をもって表現するもの」となります。
少し難しいですね。
その表現手法は、日常的なものを使って立体で表現されたり、映像やインスタレーション、絵画を用いたりと多岐にわたります。
具体的にこのジャンルが生まれたのは1950年頃とされていて、現代アートと名付けられているようにその歴史は比較的新しい方となっています。
一貫する特徴としては「分かりづらい」「難解」など、一般的な人々に対して鑑賞者泣かせになる傾向があります。(それが現代アーティストの意図するところでもあったりするのですが……)
ここからは、そんな理解しがたい現代アートの価値がわかる鑑賞方法を紹介していきます!
現代アートの本当の価値がわかる見方3選
その作品が作られた目的を知る
アート鑑賞の際、あなたは「アーティストがどんな意図で作品を作ったのか」を想像したことがありますか?
作品が作られた目的を知れば、より一層現代アートを楽しむことができます!
ここで「1つの事件」を例に、解説していこうと思います。
裁断されたバンクシーの作品が28億円で落札?
現代アートは、絵画などのほかの芸術作品とは異なり、純粋に技術的な観点や表面的な美しさのみで価値が決まることが稀なジャンルです。
例えば、バンクシーの落書きのような作品がオークション会場で、バンクシー自身の仕掛けによりシュレッダーで裁断された事件がありましたが、その作品が日本円換算で28億円で落札されました。
一体なぜ、シュレッダーで裁断された作品にこれだけの価値がつくのでしょうか?
それを理解するには、その作品を作ったアーティストの意図と時代背景を知る必要があると思っています。
このシュレッダー事件は、オークション会場サザビーズでバンクシーの作品が高額で落札が決まったタイミングで起こりました。
その時の動画がこちらです。
かなり衝撃的な事件ですよね。
シュレッダーで裁断されてしまえば、その作品に対する技巧的な観点から考えると価値は落ちてしまうと考えるのが妥当です。
ではなぜ、28億円もの値段がついているのでしょうか?
現代アートの価値が決まる観点
館長の個人的な考えですが、この事件の歴史そのものを買っているからだと思います。
シュレッダーで裁断されたバンクシーの作品を見るたびに、この衝撃的な事件を思い出しますし、この作品には人々がバンクシーに見事に欺かれたという歴史があります。
このように、シンプルに美しさや技術的な側面だけの価値ではなく、富裕層の人々を出し抜いたという歴史をもった作品としての価値に28億円の値段がつけられたのではないかと考えます。
つまり、現代アートの価値は表面的な美しさや技術では測りきれず、その作品が社会に対して「どのような目的で作られたのか?」「どのような影響を与えたのか?」ということに左右されることが多いということです。
その作品を作るまでにどれくらいの時間がかかったのか想像してみる
アート作品を鑑賞するとき、普通は鑑賞者として作品を楽しみます。
しかし、ここではその少し目線を変えてみましょう。
あなたは休日に花に囲まれたドラえもんの壁画を作るか?
制作から発表までどれくらいの制作期間が掛けられているのかをイメージできると、アーティストがその作品にかける熱量が分かり、その凄さが理解できるのではないでしょうか。
多くの場合、仕事の合間などの限られた時間の多くを費やしてその作品を制作しているかと思います。
休みの日、youtubeやテレビなどの娯楽で楽しめる時間を制作にあてている作者を想像すると、その作品にかけるアーティストの努力が感じられてくるはずです。
例えば、ドラえもんと一緒に笑顔のカラフルな花の絵をを使用した作品を制作している村上隆さんをご存知でしょうか。
彼の作品に対する率直な感想は、「よく分からない」だと思います。
館長も正直同じでしたし、今でも時々「これがアートなのだろうか?」と思うこともあります。
村上隆さんの作品は以下の動画で確認できます。(冒頭の8秒間)
しかし、その作品を作るのには膨大な時間と無数の試行錯誤、それに対する情熱が必要なはずです。
当然、普通の人は人生の多くの時間をかけて「笑顔の花で埋め尽くされたドラえもんの作品を作ろう」とは思わないですし、仮に思っても行動に移さないのがほとんどでしょう。
見えづらい綿密な計画性
さらにこの作品を例に挙げると、実は日本画の構図が取り入れられています。
これは村上隆さんが元々は日本画専攻の美大生であり、首席で卒業できなかったために日本画家になることを諦めたという過去が影響しているのでしょう。
また、彼の活動には高い作品をブレイクさせるために公開方法を工夫するなど、考え抜かれた計画性が随所にみられます。
このような点から、ビジネスマンとしての才能も備わっていると指摘されているのです。
こう考えると、はじめは意味がわからないフワフワした作品であっても、重みを感じることができるようになるのではないでしょうか。
タイトルは読んでもキャプションは先に読まない
ほかの記事でも取り上げましたが、アート作品を純粋に鑑賞する時間は平均20秒と言われています。
現代アートの文脈で、この事実について考えてみましょう。
外国の大聖堂に訪れた際に、大聖堂を横目に説明を読んで帰るか?
タイトルは作品にこめられた意味を汲み取るために必要なキーとなりますが、鑑賞する前にキャプションを読みすぎると、分かってしまった気になって興味が薄くなってしまいがち。
とくに、現代アート作品に多い巨大型作品を鑑賞する場合に顕著です。
以下は2021年10月現在、六本木の森美術館にて開催されているアナザーエナジー展に作品が展示されているフィリダバーロウが過去に制作した作品です。
なかなかにスケールの大きな作品であることが分かりますね。
しかし、写真で見るだけではその本当の凄さは全く伝わってこないと思います。
それこそ、海外に旅行して大聖堂に訪れたような感覚で、その空気を肌で感じ取ることが大事だと考えます。
その際、作品を感じ取ることを優先せず、キャプションを読むことに集中してしまうと、何だかこの作品のことを分かったような気になって興味が薄れてしまうことがあるのですね。
そのため、先に自分の感覚でその作品の独特の空気を味わい、自分はこの作品にどのような意味を感じるのかを考えてからキャプションを読むことをおすすめします。
まとめ
今回は現代アートを楽しむために、違った目線から鑑賞する方法を3つ紹介しました。
要約すると、以下のとおりになります。
・どんな背景に対して、どんな目的でアーティストが作品を作ったのかを知ることで、表面的ではない本当の価値が見えてくる
ex. バンクシーのシュレッダーで裁断された作品に28億の価値がついたのは、そこに歴史があるから。
・その作品を作るまでにどれくらいの時間がかかったのか想像することで、アーティストの凄さが見えてくる
ex.村上隆の笑顔の花とドラえもんの作品は日本画の構図が使われていたり、綿密な計画のもと作られていたり、相当な熱意がないと作ることができない。
・作品を鑑賞する前にキャプションを先に読まないことで、作品自体のオーラを肌で感じる
ex.フィリダ・バーロウの作品のような巨大型作品を鑑賞する際は海外の大聖堂に訪れた時のように、自分の感覚で作品と向き合うことでその凄さを実感できる。
難解で嫌煙されがちな現代アートですが、色々な楽しみ方がありますね。
実はほかのアートよりも少し頭を使う、知的な鑑賞体験になるのかなとも思います。
また、今回の記事で現代アートをより詳しく知りたくなった人には、こちらの本が分かりやすくおすすめです。
現代アートの展示会は年間を通して多くの美術館で開催されているので、ぜひ足をお運びください!