こんにちは!
教養派アート入門メディア『3L museum』を運営している、白くま館長(@3Lmuseum)です。
この記事では、フェルメールやレンブラントが活躍した時代である『バロック美術』について解説していきます。
特にフェルメールは日本でも人気ですね!
2019年に上野の森美術館で開催されたフェルメール展は、常に大行列ができるほどの人気でした。
館長がこれまでに経験した美術館行列の中では最大かも知れません……。
今回は、それほど人気な画家を輩出したこの時代の地域や代表的な作品たちを紹介していきます。
時代背景やほかの画家のことを知ることで、より充実した鑑賞をしてみませんか?
バロック美術とは?
17世紀を代表する美術が、このバロック美術です。
日本で言うと、安土桃山時代から江戸時代前期にかけての頃ですね!
時代背景的にはルネサンスの後に位置付けられています。
「バロック」という言葉は、ポルトガル語で「ゆがんだ真珠」という意味を持っています。
このゆがんだ真珠という表現は、当時の美術をみた批評家の戸惑いを意味しているとされています。
当時の批評家は何に戸惑ったのでしょうか?
バロック美術の特徴は、ルネサンスの伝統+αの強烈な効果を加えていることにあります。
激しい動きや強烈な明暗表現は、バロックの真骨頂とも言えるでしょう。
このルネサンスの伝統をそのままに発展させた様子に、当時の批評家は戸惑いを感じたのです。
また、バロック美術は地域ごとに特色を持つ美術でもあります。
バロック美術の起こりはイタリアのローマでしたが、フランドルやオランダ、スペインやフランスと次第に独自のバロック美術が生まれてきます。
フランドルではキリスト教的な主題の絵画が描かれる一方、オランダでは風景画や風俗画、といったように、地域により描かれるジャンルが変わってきます。
中にはバロックというよりも古典主義な地域もあったり……
以上のように、ルネサンスの伝統+αがありつつ、地域ごとに発展していった美術がこのバロック美術なのです。
ここからは、地域別に作品とその特徴について解説していきます。
イタリアのバロック美術
イタリアのバロック美術では、キリスト教を主題としたダイナミックな劇的表現を孕む作品が登場しました。
強烈な光と闇のコントラストによって描かれる、ドラマチックな作品が数多く生まれます。
このようなバロックを象徴するダイナミックでドラマチックな雰囲気は、バロック的イリュージョンとも呼ばれたりします。
そんなドラマチックな作品を描く画家を何人か紹介します。
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ
特徴:光と影を効果的に使用したドラマチックな表現。性格は凶暴だったとか……
ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ
特徴:瞬間の動作や表情を捉え、迫力に満ちた彫刻を作成した。
カラッチ
特徴:ルネサンスの巨匠を理想とし、調和がとれた美しさを追求した。
フランドルのバロック美術
フランドルとは、現在のベルギーを指します。
フランドルでは、イタリアのようなキリスト教的主題に加えて、君主の肖像画が多く描かれました。
一部には、ただの肖像画ではなく君主を神格化したものもあったそうです。
また、この地はルーベンスが活躍した場所でもあります。
ルーベンスはイタリアで宮廷画家となり、帰国した際に工房を構え、弟子や友人たちと制作に励み分業量産体制を確立させました。
フェルメールやレンブラントと並び、バロック美術の最重要人物の1人なのです。
ピーテル・パウル・ルーベンス
特徴:イタリア絵画の伝統と、写実的な油彩画の技法を組み合わせて、ダイナミックで色彩溢れる作品を制作した。
ヴァン・ダイク
特徴:ルーベンスの工房で学んだ後イギリスへ渡り、馬・全身像・樹木で描かれる肖像画を確立。
ヨルダーンス
特徴:宗教画や神話画を風俗画のような感覚で描いた。
オランダのバロック美術
イタリアやフランドルでは、宮廷が美術の担い手でした。
それに対して、オランダは市民階級が担い手のバロック美術です。
そのため、わかりやすく親しみやすい風景画や風俗画、静物画といったものが多く制作されています。
バロックを代表する画家ともいえるフェルメールやレンブラントは、オランダにて活動して名作を生み出しました。
以上のことからか、この頃のオランダは「オランダ黄金時代」とも呼ばれます。
ヨハネス・フェルメール
特徴:光を巧みに表現した、知的な室内画を描いた。現存する作品数は35点のみと少ない。
レンブラント・ファン・レイン
特徴:集団肖像画や、光と影を効果的に用いた人間味あふれる絵画を描いた。
フランス・ハルス
特徴:まるでスナップショットのような、表情豊かな市民の肖像を描いた。
スペインのバロック美術
当時カトリックを基盤に王権が強化されていたため、宗教画を中心に肖像画や風俗画が描かれました。
この時代はスペインで数々の名作が誕生し、スペイン絵画の黄金時代とも呼ばれています。
ベラスケスやエル・グレコといった、スペイン画家の豪華ラインナップが揃った、スゴい時代なのです。
ディエゴ・ベラスケス
特徴:スペイン・バロック最大の巨匠。宮廷画家として宮廷のありのままの姿を残した。
エル・グレコ
特徴:激しい明暗法を用いて、神秘的かつ象徴的な作品を描いた。
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
特徴:庶民階級の子供をモデルに描いたり、癒されるような優しい宗教画を描いた。描いたマリアは世界一美しいと言う声も多い。
フランシスコ・デ・スルバラン
特徴:「修道士たちの画家」と言われるように修道会のニーズに正確に応えた画家。厳格な存在感、雰囲気が特徴。
フランスのバロック美術
フランスでは、風景画や風俗画、キリスト教やギリシア神話を主題とした作品が数多く生み出されました。
バロック美術ではあるものの、昔をリスペクトした荘厳で調和のとれた作品構成に特徴があります。
どちらかといえば、古典主義的なイメージかも知れません。
建築でいうと、ヴェルサイユ宮殿が建築されたのもこの頃です。
ジョルジュ・ラ・トゥール
特徴:宗教画を背景のない私的な空間に描いた。真っ暗な背景にぼんやり映る…そんな表現が多いです。
ニコラ・プッサン
特徴:古代ローマの美術を理想として、優雅さと洗練された雰囲気を追求した。ラファエロと並び芸術の基準にされたことも。
クロード・ロラン
特徴:古典的な風景画をずっと描き続けた。
まとめ
いかがだったでしょうか?
バロック美術の時代は、レンブラントやフェルメール以外にも多くの巨匠を輩出した時代でした。
ルネサンスの伝統にとらわれない作品を追求する点からみて、彼らもチャレンジャーであったのかもしれません。
また地域ごとに発展していくことで、それぞれの雰囲気を持つバラエティ豊かな芸術が生まれた時代でもありました。
静物画や風俗画も、この頃に誕生したと言われています。
宮廷や市民、宗教など、美術を求める人々が多種多様な時代でもありますね!
今回解説したバロック美術を一言で表すと、「ルネサンス文化にドラマチックさや明暗表現といった効果を加えることで、様々なジャンルを生み出した美術」でしょうか。
バロック美術に関しては、今回深くは触れていませんが宗教の歴史と紐づけて考えるとより理解が深まり面白いと思うので、ぜひチェックしてみてください!