こんにちは!
教養派アート入門メディア『3L museum』を運営している、白くま館長(@3Lmuseum)です。
美術館の展示内容には、違いがあることをご存知でしょうか。
美術館の展示内容は、『常設展』と『企画展』の2種類に大きく分類することができます。
「どんな特徴や違いがあるの?」
「結局どっちがいいの?」
この記事で、これらの疑問にお答えするので、みなさんのアート鑑賞の参考になれば幸いです。
企画展と常設展の違いを整理してみて、どんな展示を見に行こうか一緒に考えてみましょう!
・常設展と企画展の特徴
・それぞれの展示内容の違い
・結局、どちらの展示がおすすめなのか
常設展とは
常設展とは、美術館が持っているコレクション作品を公開する展示のことです。
期間が定められているもの、そうではないものの2種類がありますが、比較的いつでも好きな時に、美術館の持つ作品を鑑賞できるという特徴のある展示です。
企画展とは
企画展とは、そのテーマに沿って企画された内容の作品を集めて、一堂に公開する展示のことです。
期間が決められている、海外の作品などを鑑賞できる、様々なテーマに沿っていて世界観に入り込みやすい特徴のある展示です。
企画展と常設展の違い
企画展と常設展には、それぞれ大きな違いがあります。
今回は、3つの違いにフォーカスをあてて紹介していきます。
・作品の保有
作品を保有しているか否かに違いがあります。
美術館は、それぞれ自分のコレクションを保有しています。
そのコレクションの内容は、美術館がオークションや画商を通して購入したものであったり、個人の方から預かっているものであったり、作家本人が寄贈したものであったりと様々です。
これらのコレクションを一般に向けて常時公開している展示が常設展というわけです。
一方で企画展は、作家や流派など、その企画に沿って各美術館や個人から作品を借りて、一堂に集結させた展示です。
そのため、企画展は、その企画展をする美術館が保有している作品と各美術館や個人が所有している作品で構成されているのです。あるいは、全て借りた作品で構成され、場所を提供するような企画展も存在します。
コレクションを初めから持たない美術館も存在します。代表例として『国立新美術館』がそうであり、このような美術館は企画展のみをおこなっています。
ただし、企画展1つを開催するのではなく、美大の卒業制作展示やコンクール作品の展示など、大小様々な企画展をシーズンごとに開催しているのが大きな特徴と言えます。
常設展:美術館が保有しているコレクションを一般に向けて常時公開している展示
企画展:作家や流派などの企画に沿って、各美術館や個人から作品を借りて集結させた展示
・展示期間
展示期間も、常設展と企画展では異なります。
常設展は、期間が決まっていることとそうでないことがあります。
常設展において展示される作品は、美術館が保有しているため、展示期間を決める必要がないのです。
ただし、大量のコレクションをもつ美術館では、一度に全ての作品を公開することができないため、期間を設けて展示替えをしたりしています。そのため、常設展に期間が設けられる、というパターンも存在します。
それに対して企画展には、必ず展示の期間が設けられています。期間を設ける理由として、先ほどの所有のお話が絡んできます。
美術館は企画展を開催するにあたり、国内のみならず海外からも作品を借りる必要があります。そのため、貸す方も借りる方もちゃんと期間を決めておかなければならないのです。
・いつ借りに来るか
・どのくらいの期間で移動、搬入できるか
・準備はどれくらいかかるのか
・開催はどれくらいを要するのか
・返却にどのくらい時間がかかるのか
全ての企画展は、上記のような綿密なスケジュールの元、お互いの信用で成り立っています。借りたものは必ず返す。常識ですね。そのため、企画展には展示期間が設けられているのです。
常設展:基本的に展示期間は設けられていない
企画展:展示期間が設けられている
・規模
規模の大きさこそ、もっとも違う点であると言えます。
常設展は、基本的にアピールをあまりしていません。
企画展と比べてみるとあまり規模自体は大きくありませんが、芸術や文化を誰に対しても常に公開するという美術館自体のミッションを達成している、とても大切な展示とも言えます。
ちなみに……
もちろん、常設展もアピールされることはあります。例えば、開館したての美術館や初めての企画展は、自分の美術館のコレクションをふんだんに使った場合がほとんどです。
具体例を挙げると、最近リニューアルした新宿の『SOMPO美術館』は、保有するゴッホのひまわりを全面的に押し出した展示を開いていました。(ゴッホのひまわりって日本でもみることができるんですよ!)
一方、企画展は、雑誌や駅の広告で打ち出されたりTV番組が組まれたりと、広報の規模がとても大きいのです。
そのため、私たちの目に止まることが多く、認知度がかなり高いのが特徴と言えます。
さらに、企画展によってはバンドの全国ツアーのように会場を転々とする巡回をするものもあり、時期によってはどこでも楽しむことができます。
このように、企画展は大規模でもっとも人が集まる美術館のメインコンテンツであると言えます。
規模の大きさには違いがあるものの、それぞれが美術館にとって大切な要素を持っているのです。
常設展:規模は大きくないが、芸術や文化を誰に対しても常に公開している
企画展:大規模で注目されやすいものが多く、人が集まりやすい
常設展と企画展、結局どっちがおすすめなの?
企画展と常設展の違いを解説したところで、「結局どっちがいいの?」というお話をしていこうと思います。
見ていただければ分かる通り、両者ともにメリット・デメリットがあります。
その中で、特に大きなポイントとして挙げられるのが、来館者の数とテーマ性です。
企画展の特徴
企画展は、大規模な広報による集客もあり、場所によってはとても混雑します。
最近では、東京都近代美術館で開催された石岡瑛子展が入場1時間超え待ち、このような大混雑がありました。
企画展は、ある種のトレンドのようなものであるため、流行りが好きな人やそのアーティストが好きな人にはおすすめです。
しかし、人混みが多くて作品一つひとつをゆっくり見れないことが大きなデメリットになり得ます。
常設展の特徴
一方で、常設展は企画展に比べて比較的空いています。
ゆっくり、じっくり、静かに鑑賞したい人にとっては最高の環境であると思います。
ただし、常設展はその美術館のコレクションであるため、あまりテーマ性がないことも多々あります。
時代や作家で固めている美術館もあるのですが、企画展に比べると少しばらつきがある点も場合によっては気になりますね。
初心者は『企画展』がおすすめ!
上記の点を考慮してみると、初めてアートに触れる人にとってはテーマ性を理解しやすい企画展がおすすめです。
企画展が始まると、公式ホームページで世界観をざっくりと知ることができるほか、ワークショップや講演会、音声ガイドといったそのテーマに触れることのできる様々なアイテムが充実し始めるなど、いろんな視点からテーマに触れることができるのです。
常設展:静かに鑑賞できるが、作家や流派のばらつきから初心者には難しい可能性がある
企画展:来館者が多く混雑が予想されるが、テーマが絞られてるからこそ理解しやすい
まとめ
常設展と企画展の特徴や違いにフォーカスして解説しました。いかがだったでしょうか?
それぞれ比較できるように、おさらいしておきましょう。
保有:美術館が保有しているコレクションを一般に向けて常時公開している展示
期間:基本的に展示期間は設けられていない
規模:大きくはないが、芸術や文化を誰に対しても常に公開している
特徴:静かに鑑賞できるが、作家や流派のばらつきから初心者には難しい可能性がある
保有:作家や流派などの企画に沿って、各美術館や個人から作品を借りて集結させた展示
期間:展示期間が設けられている
規模:大規模で注目されやすいものが多く、人が集まりやすい
特徴:来館者が多く混雑が予想されるが、テーマが絞られてるからこそ理解しやすい
企画展は理解がしやすい上、期間ごとに入れ替わるのでどんどん新しい作品に触れていくことができます。
さらに、理解を深めるサポート面に関しても企画展は充実しているため、たくさんアートを感じ、見て、知ることができるのです。
もちろん、「初めから常設展はやめておけ!」なんてことは決してありません。
それぞれの展示にメリット・デメリットがありますが、様々な展示を通してどんどん教養を深めていきましょう!