美術館のポストカードを買うことには意外な落とし穴が! メリット・デメリットを解説

こんにちは!
教養派アート入門メディア『3L museum』を運営している、白くま館長@3Lmuseum)です。

みなさんは、美術館のギフトショップでポストカードを買っていますか?

企画展の最後にはほとんどの場合ギフトショップが設置されており、そこには素晴らしい作品たちのポストカードがたくさん並んでいますよね。

館長

きっと思い出として、何枚か買っている人も多いのではないでしょうか?

そんなポストカードですが、実は意図していないところで意外な落とし穴があるのです。

なかなか気付けないポイントだと思いますので、今回はポストカードのメリットとデメリットについて解説していきます!

目次

ポストカードを買うメリット

それでは、まずはポストカードを買うメリットをみていきましょう!

・思い出として手元における(スーベニア)

ふとポストカードが目に入ると、展覧会に訪れた時のことを思い出すことができます。

だいたいのポストカードの裏面には展覧会のタイトルが記載されていますから、仮に長い年月が経ってしまっていたとしても、それが何年前のものであるかをすぐに思い出すことができます。

また、展覧会を見て気に入った作品を選んで購入することができますから、その当時の自分が何に心を惹かれていたのかも一目で分かりますよね。

館長

思い出として残せる点は、ポストカードならではのメリットだと思います!

・インテリアとして使える

購入したポストカードをインテリアとして使うことができるのも利点の1つです。

ポストカードは非常に軽量で壁にも配置することができるため場所を選びません。

部屋の中に配置することでいいアクセントとなるでしょう。

また、ポストカードという形状のため、たくさん集めても場所を取りません。

そのため、収集心もくすぐられて思わず集めたくなってしまいます。

館長

館長もその1人で、美術館を訪れた際の立派な楽しみの1つになっています。

ポストカードを買うデメリット

想像しにくいかと思いますが、ポストカードを買うデメリットも存在します。

大きく2点に分けて紹介していきます!

・画質が再現できないから、本物を見た時の感動を再現できない

ポストカードが印刷される際は、基本的にCMYKという形式で印刷されます。

CMYKは印刷時の色の使われ方に関わる内容で、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの4色で印刷されることを表します。

データで表す際の色の形式にはいくつかあるのですが、このCMYKというのは比較的表現できる色の範囲が狭くなっています。

具体的には、彩度の高い赤・黄・青などは、くすんだ色になってしまうという感じです。

例えば、モネのようなものすごく緻密に色を組み上げて表現する画家の絵をポストカードにしたと考えてみましょう。

当然ですが、元の作品に使われていた美しい色の大部分が、ポストカードに印刷した際には失われてしまっています。

また、基本的に画家は人間が直接作品を見た際に、どのように目に映るかを計画的に考え抜いて作品を制作しています。

当然ながら一度データ化して、それを印刷した時にどの様に見えるかなど考えていません。「データ化して印刷するときはこういう感じに設定してね」という伝言もしていません。(そもそも、データ印刷技術が登場したのが1990年代以降)

そのため、実物の絵画作品に施されているテクスチャーなどは再現されていない場合がほとんどです。

ここでモネの『ジヴェルニーの娘たち、陽光を浴びて』を例に挙げて見てみましょう。

下に載せてあるものが作品をデータ化したものです。

ポストカードの印刷は、この状態からさらにCMYK形式に色調が変換された上でおこなわれます。

館長

原色に近いビビッドな色ほどくすんで印刷されるということですね。

対して、館長が先日訪れた「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 -モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン」に写真撮影OKエリアに展示されていた実物の作品のクローズアップをみてみましょう。

表面がかなりザラっとしていそうなことが分かるでしょうか?

この作品、先に紹介した画像からだと分かりませんが、実物はかなり強調されたテクスチャーで表現されています。

さらに、その上からニスが塗られていて、光の反射で柔らかく輝いて見えるように作られています。

このような点がポストカード印刷した際には失われてしまうため、本物と比較した際にデメリットと感じてしまうのではないでしょうか。

・意識していないとポストカードに記憶が上書きされる

上述したように、実物とポストカードに印刷されたものでは印象が少し変わってしまいます。

つまり、「ポストカードの印象=実物の印象」ではないということです。

美術館で鑑賞後にお気に入りの作品のポストカードを購入して、特に意識せずに眺めていると、いつの間にかポストカードから受ける印象に上書きされてしまうという可能性が出てきます。

そのため、意識的に実物を見たときの感動や、その作品のディティールがどのようであったか、ポストカードには何が表現できていて何が表現できていないのかを把握してみることが大事だと思います。

この観点を意識することにより、美術館で作品を鑑賞するときにも、より細部まで観察することができるようになるはずです。

そして、そのままその時間を貴重なものとして大切に過ごすということにもつながります。

館長

美術館での体験と同じくらい価値のあるものになるはずです!

まとめ

ポストカードを買うメリット・デメリットを紹介しました。いかがでしたでしょうか?

館長

普通に過ごしていると、なかなか気づかないポイントに気付いていただけたら嬉しい限りです!

今回のポストカードのメリット・デメリットを簡単にまとめると、以下のようになります。

メリット
・展覧会の思い出として保存することができる
・インテリアとして飾ったり、収集品として楽しむことができる

デメリット
データ印刷では元の作品の画質を完璧に再現できないため、本物を見た時の感動を再現できない
人間の記憶能力は適当な部分が多いため、意識していないとポストカードに記憶が上書きされてしまう

次に美術館に訪れた際には、これらのメリット・デメリットを考慮したうえでポストカードの購入を検討して、よりよい体験にしてくださいね!

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

1996年生まれ。大学卒業後、美術館でナビゲーターとして教育普及に従事。教養としての芸術を広め、芸術に対する価値観やイメージをアップデートしたいという想いから、2021年3月に「3L museum」を開設。牛乳キャップやチロルチョコの包み紙など、芸術的価値があると感じるモノの蒐集が趣味。




目次
閉じる