こんにちは!
教養派アート入門メディア『3L museum』を運営している、白くま館長(@3Lmuseum)です。
突然ですが、美術館において最もタブーとされていることはなんでしょうか?
その答えは、展示されている作品に触ることです。
作品に触れてしまう行為は、傷や汚れをつけてしまい、作品そのものの価値を下げてしまいます。
絵画であれば額縁に入っているケースが多いものの、作品自体がむき出しになっている彫刻などの立体作品もあります。
これらの作品に触れるという行為は、美術館の禁止事項として世の中に浸透していきました。
しかし、そんな暗黙の了解を打破するように、作品に触れることを許す場所も存在するのです。
今回は、そのような『作品に触れる美術館』について紹介していきます。
館長が実際に訪れた触れる美術館をもとに、普段の鑑賞とどんな違いがあるのか、また美術館側には触れさせることにどんな狙いがあるのかを解説していきます。
北海道立函館美術館「アートにタッチ!」
ふらっと立ち寄った美術館で、なにやら今までにかつて見たことのない常設展を開催していました。
それが、北海道立函館美術館の「アートにタッチ!」という展示です。
文字通りタブーに反するような、美術品に触れることのできる展示だったのです。
「アートにタッチ!」とは、どんな展示?
メインホールには、4つのブロンズ像が展示されていました。
私自身が訪れた際は、古賀忠雄とエミール=アントワーヌ・ブールデルの作品が展示されていました。(古賀忠雄は鹿児島の西郷隆盛の像の作者として有名な方、ブールデルはメトロポリタン美術館などに作品があるブロンズ界の重鎮です)
事前に手を洗い、指輪や時計を外した状態で、それらに触れることができます。
ただし、持ち上げたり動かす行為はNG。
ブロンズ像であっても、優しく触れることが大切なのです。
感想
公園や駅にあるブロンズ像は、私自身も実際に触ったことがあります。
ゴツゴツしていて重みがあって、中身も空洞のことがあれば詰まっていることもある。
そんなブロンズの質感は知っているはずでしたが、美術館で触れるブロンズ像ではさらなる情報を感じることができました。
作者の作っている情景が浮かんでくるほか、「目が二重になってる」といった繊細な部分への気づきを得ることができたのです。
加えて、抵抗感や背徳感も同時に抱きました。
普段禁止されている行為をやっているため、なんだか後ろめたい感覚でアートに触れていました。
美術館側の狙いは?
では、どうして美術館は禁止事項である触るという行為を許しているのでしょうか。
たしかに、美術館の作品に触れることはいけないというルールが根付いています。
もちろん触れることで傷つけたり汚してしまうと、作品の価値が下がってしまう危険性がありますよね。
作品を守る美術館が、あえてアートを危険に晒している、という矛盾に違和感を覚えるのも納得です。
それでも、アートに触れることを推奨する美術館。
そんな美術館側にも、ちゃんとした想いがあるのです。
その想いというのが、目が不自由な人にもアートを楽しんでもらうという狙いです。
函館美術館の「アートにタッチ!」でも、点字で書かれたキャプションが用意されており、目が不自由な人でも鑑賞ができるようになっていました。
目が不自由な人には鑑賞するのが難しいなんてことは決してありません。触れることで鑑賞ができます。
アートの硬さ、柔らかさ、冷たさ、暖かさ、触り心地など。
触れること、つまり触覚によって、目で見ただけでは知り得ないような情報を知ることができるのです。
4つのステップで例えると、見るが触れるになったようなイメージですね。
アート鑑賞は、目で見ることで達成されるとは限りません。
触れる美術館は、「どんな人でもアート鑑賞を楽しめるように」、そんなメッセージを込めて企画されているのです。
新しい目線でのアート鑑賞
本来であれば、美術館で作品に触れることはタブーとされています。
しかし、作品に触れることでどんな人でも鑑賞をすることができる美術館もあります。
美術館という場所でアートに触れることで、誰にでも鑑賞ということを楽しめるほか、普段の鑑賞では味わえないような気づきを得ることができるのです。
触れることでしかえられない、新しい目線の鑑賞。
皆さんもぜひ一度経験してみてください!
※情勢によっては中止になっている場合もあるので注意してください