こんにちは!
教養派アート入門メディア『3L museum』を運営している、白くま館長(@3Lmuseum)です。
ここ数年、写真撮影のできる美術館が人気になっていますね。
話題の企画展などでは基本的に写真撮影がOKになっているため、フォトジェニックな写真を撮影しに訪れている人も多いと思います。
ですがその一方で、撮影方法を工夫して撮っている人は少ないのではないでしょうか。
「周りの人がみんな撮っているし、なんとなく撮影するだけでもフォトジェニックな雰囲気になるからとりあえず撮っておこう」という人も中にはいるのでは?
言ってしまえば、そういった写真は多くの人が撮影しているため、Instagramなどでいくらでも見ることができます。
思い出としては残るので否定はしないものの、せっかくなら素敵な写真を撮りたいですよね。
この記事では、あなたの視点を反映させたユニークで価値がある写真の撮影ご紹介します。
オリジナリティあふれる素敵な1枚を撮ってみましょう!
前提として
そもそも、美術館や展示会は撮影してもOKなルールなの?
結論、撮影OKかどうかは、その美術館のルールによって決まっています。
全面的に撮影が禁止されている美術館もあれば、撮影禁止マークのついているブースのみ不可という美術館もあります。
また、三脚などの本格的な機械の持ち込みは基本的にマナー違反です。
ほかの鑑賞者の迷惑になってしまうので、撮影する際はスマートフォンかカメラだけでおこないましょう。
しっかりとルールを確認した上で、写真を撮りましょうね。
この次からは、美術館で撮影する際に気をつけておきたいポイントについて解説していきます。
美術館で撮る写真はワンパターンになってしまいがち
写真撮影OKの美術館で写真を撮る時、どのように撮影しますか?
おそらく、作品の全体像がわかるように撮影すると思います。
しかし冒頭でも紹介した通り、それと同じような写真が実はネットやSNSでいくらでも入手できてしまいます。
写真を撮りたくなる気持ちというのは色々ありますが、美術館での撮影に関しては「その景色・作品を自分のものとして持っておきたい」という気持ちからくるものだと思っています。
その写真が世界でも数少ないユニークな写真であれば嬉しくなると思いますが、同じような構図の写真がいくらでも入手することができると知ったら少し悲しくなってきませんか?
しかも高い入場料を払って、せっかく五感で楽しめる限られた時間を消費して撮影しているのに、と考えたらなおさらです。
それでは、具体的にどうすればユニークな写真が撮れるかみていきましょう!
クローズアップして撮影する
作品の全体像を撮るのではなく、より近づけて一部分だけをクローズアップして撮影することで自分が気になった視点として記録することができます。
セザンヌの『リンゴの籠のある静物』を例に挙げて、クローズアップをやってみましょう。
思わず全体像を撮影して、手元に残しておきたくなる美しい作品ですね……!
しかし、今回はあくまで美術展で展示されているこの作品を撮影すると仮定して考えてみましょう。
全体像を写した作品なら、きっと美術展を出た後にInstagramでハッシュタグ検索をかければいくらでも出てくるでしょう。
では、ここでバスケットの部分をクローズアップしてみてみましょう。
いかがでしょうか?
全体像で見た場合とはかなり違った一面を見ることができていると思います。
このクローズアップで、どのような点が分かるようになっているのかを解説します。
・筆致(タッチ)
リンゴの描かれ方に注目すると、一つひとつが画筆によって大胆なストロークで描かれていることがわかります。
・境界線
よく見るとリンゴやバスケット、布という物体と物体の間に、黒に近い色で境界線が描かれていることが分かります。この線は比較的はっきりと描かれており、セザンヌの作品を印象的にしている重要な要素の1つだと思っています。
漫画もキャラクターの輪郭がはっきりしている作品は印象的ですよね。ex. 「ドラゴンボール」「僕のヒーローアカデミア」
・デッサン力
全体を俯瞰できる写真からだとわかりづらいポイントの1つが、画家のデッサン力です。
ここではわかりやすいようにリンゴに焦点を絞って「リンゴ表現力」としましょう。画像中央付近の緑と赤が入り混じったリンゴにご注目ください。
一見ぼんやりした丸いリンゴに見えますが、そこには奥行きも感じられ、立体であるように見えませんか?
ここがセザンヌの凄いところで、彼はざっくりとした抽象的な印象と自然に立体に感じられる点を両立できているのです。
これはかなり高い技術力を要することであり、彼のリンゴ表現力がもの凄く高いことがみてとれます。
・自分だけが気づいた魅力的なポイント
自分が気づいた魅力的な一部分だけを切り出して撮影するのもユニークな視点を得ることができます。
上の作品の例で言うと、館長は中央付近の赤と緑の入り混じったリンゴがとても気に入っていました。
おそらく、このリンゴは成熟がはじまって赤くなり始めたばかりの頃に収穫されたリンゴであり、この絶妙な時期のリンゴを実に巧妙に自然に描き出していると感じました。
このようにポイントをメインに据えて撮影することで、自分の視点が反映されたユニークな写真となります。
こうした写真であればインスタで検索してもヒットすることはほぼなく、何より見返した時に嬉しい気持ちになるはずです。また、当時の感情もより鮮明に思い出すことができるでしょう。
このように、クローズアップして撮影することで、全体像の写真からは見えてこない特徴をとらえたユニークな写真を記録として残すことができます。
もしくは、もはや写真を撮らない
美術館で入場料を払って得られる最も価値あるものは何かというと「自分の五感で目の前の一級品の作品を味わえること」。
そこで得た感情や感動、知識が思い出やセンスとして蓄積できることだと考えます。
それに対して、気に入った作品は写真で残しておいて、その場ではあまり時間をかけて鑑賞せずに後で見返すといった場合どうでしょうか?
おそらく、目の前の作品を五感で楽しむことと比較すると、そこから得られるものは圧倒的に少なるなるはずです。
館長もここ最近いくつかの展示会に訪れましたが、どこにいってもカシャカシャというシャッター音が際限なく鳴り響いており、「なんだかなぁ」と思いました。(そして、そう思いつつもスマホのカメラを起動してしまう自分自身も……)
そのため、大切なのは「撮影するかしないかを自分で取り捨て選択すること」です。
周りがみんな撮影しているから撮影するのではなく「この作品のこう言う部分が気に入ったから、記録に残しておくために撮っておこう」もしくは「この作品はカメラ越しではなく、今この瞬間の自分の五感で鑑賞したい。だから周りが撮影していようとも私はじっくりみていよう」といった判断をできるようになるとベストなのではないでしょうか。
撮影時のマナーについて
冒頭にも軽く触れましたが、撮影する際のマナーについてもお話ししておきます。
そのなかでも、とくに気になるであろう「カメラのシャッター音」についてです。
あくまでも館長の意見なのですが、美術館で撮影をするときはシャッター音には注意を払うべきだと思っています。
なぜかというと、シャッター音がほかの鑑賞者の気を散らしてしまう要因になってしまうと考えるためです。
例えば、自分が集中して鑑賞したい作品があったとして、その作品の周りでシャッター音がいつまでも鳴り響いていたら集中するのは困難だと思います。
美術館に漂う、澄み渡ったような独特の雰囲気にも悪影響を及ぼしてしまいかねません。
そのため、なるべく無音カメラを使用するか、動画撮影モードを起動してシャッター音が鳴り響かないように配慮するようにしましょう。
また、動画撮影自体が禁止されている美術館もあるので、その場合は無音カメラを使用するといった配慮はすべきだと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回の記事では、ありきたりな写真撮影にならないように次のような点を紹介しました!
・全体像を撮るのではなく、気に入った部分をクローズアップして撮ることで自分のユニークな観点を反映させた写真が撮れて記録に残せる。
・美術館の醍醐味は高い料金と引き換えに五感で普段味わえない芸術作品を鑑賞・体験できること。写真を撮ることに気を取られすぎずに、撮るか撮らないかを自分で選択することが大事。
・基本的なマナーとして、シャッター音はほかの鑑賞者の邪魔になってしまうため、無音カメラか許可があれば動画撮影を使用するようにすべき。
今回の記事で、美術館での写真撮影について新しい視点を獲得してもらえてたら嬉しい限りです!