観察力を鍛えるワークショップ Vol.9

こんにちは!
教養派アート入門メディア『3L museum』を運営している、白くま館長@3Lmuseum)です。

観察力を鍛えるワークショップへようこそ!

今回のワークショップでは、穏やかな場面ながらもどこか謎がある興味深い作品を紹介します。

所要時間は約5分です!

また、このワークショップでは次のものを必要とします。
ありあわせで大丈夫なので、読み進める前に手元に用意しておいてください!

・文字が書ける紙
・鉛筆、シャープペン、ボールペンなど

目次

作品を見てみよう!

それでは作品の紹介です!

まずは2分間で「アウトプット鑑賞」をしてみましょう!
作品を見て「気づいたこと」や「感じたこと」を自由に書き出してみてください!

所蔵:フリックコレクション

あなたは気づいた?サクッとチェック

ここでちょっと難易度の高いチェックポイントを紹介します! あなたは気がつきましたか?




どこからそう感じた?

次は自分の感想の中から1つ選んで、「どこからそう思ったのか」を深掘りしてみましょう!

より鮮明に観察することができるようになります。例えばこんな感じです!

男性が女性に何を渡しているのか気になった
→テーブルの上の紙は楽器のようなものの上に掛けられていて、楽譜のような印象を受けるけど、男性が手渡している紙は何が書かれているのか見て取れない。だから、どういう意図で渡しているのか気になった。

見ていると、なぜか女性に意識が向けられる気がする
→絵の中で女性の服だけがとても目を引く赤色をしていて、さらになぜか分からないけどこちらを真っ直ぐに見つめている。きっとこれが目を引く理由なのかな。

ぱっと頭に浮かぶことで大丈夫です。それでは気楽に1分間でやってみましょう!

この作品はどんな作品?

この作品は、17世紀のオランダを代表する画家ヨハネス・フェルメールが描いたものです。

作品のジャンルとしては、『バロック絵画』に分類されます。

バロック絵画とは、1600年〜1700年頃に主に描かれた絵画のスタイルで、ドラマのような劇的な描写技法や豊かで深い色彩、強いコントラストがつけられていることなどが特徴です。

館長

当時はドラマやミュージカルのように、芝居がかった場面描写が好まれていたようです。

作者について

作者のフェルメールは、日本でもとても人気のある画家なので、知っている人も多いのではないでしょうか?

しかし実は、彼が描いた作品数はとても少なく、正式に認められているものだと32〜37点ほどしか存在しません。

そのため、フェルメール展などで8点の作品が集まったこともありますが、それだけでも相当凄いことだと言えるのです。

描かれているモチーフたち

ここで、絵画に描かれているモチーフも簡単に説明しておきますね。

男性の背後の壁に掛けられている絵画には、左手をあげたキューピッドが描かれていると言われています。
これは、この絵画のテーマが恋愛であることを示しているそうです。

また、テーブルの上にはシタールという弦楽器、赤ワインの入ったワイングラスと瓶(デキャンタ)が置かれています。
このワイングラスは、二人の親密性を表しているとも言われています。

館長

たしかに、仲良くない先生と音楽の授業しながらお酒は飲まないですよね。

作品のタイトルは?

ところで、この作品のタイトルは何でしょうか? まだ紹介していませんでしたね。

中断された音楽の稽古』という作品名です。

館長

このタイトルを知ると、絵に対する見方が大きく変わってくるのではないでしょうか?

普通に美術館で作品を鑑賞する場合、ほとんどの人はまずキャプションに目をやると思います。

すると、「ああ、この絵は稽古中に誰かが部屋に入ってきて、女の人が振り向いている場面を描いているのか」と理解するでしょう。そして、全て分かったとばかりに次の絵に向かってしまうかもしれません。

ですが、このタイトルを隠した状態で最初に2分間観察したら、どうでしたか?

きっと枠に囚われず目を向けることができ、様々なことを想像できたと思います。

「どうして女の人がこちらを真っ直ぐに向いているのか?」
「テーブルの上に置かれているものは何だろうか?」
「楽器のような気もするけど、全く別の何かかもしれない」など

自分で仮説を立てながら絵を観ていくことで、観察力を高めることができます!

先にタイトルを知ってしまうと先入観が邪魔をして、他人と同じような見方しかできなくなってしまう可能性があります。

この作品をあなたはどう思う?

では最後に、この作品を観てあなたは今どう思いますか?

作品をよく観察し、背景を知ったあなただからこそ出てくる感想がきっとあるはずです。自由に書き出してみましょう!

ここでほかの人の感想も紹介させていただきますね。

「タイトルや説明を知らない状態で観察した時と、タイトルを知った後で受けるイメージががらっと変わるところが面白かった! まるでドラマの伏線回収みたい」

「どんな人が入ってきて中断されたのかが気になる。男性は気にしてなさそうだから、女性の知り合いの人とかなのかな?」

まとめ

今回はオランダの有名画家フェルメールの作品を紹介させていただきました!

最後に、この記事のポイントを簡単にまとめると以下のとおりです。

・フェルメールの作品は非常に少なく、展覧会などで数展が集まっただけでも裏で大きな努力があったことが伺えるような凄いことでもある
・絵画に描かれているモチーフには何らかの意味が与えられていることが多く、それが理解できるとよりアートを楽しめる
・先にタイトルやキャプションを読まずに鑑賞すると、より観察力や洞察力が磨かれる

タイトルやキャプションを読まない状態でじっくりと絵画を観察すると、他人とは違った観点で気づくこと増えることがわかってもらえたのではないでしょうか?

以上で今回のワークショップは終了です!

館長

次に美術館に行った時は、キャプションなしで作品を観てみるのもいいかもしれませんね!

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この記事を書いた人

1996年生まれ。大学卒業後、美術館でナビゲーターとして教育普及に従事。教養としての芸術を広め、芸術に対する価値観やイメージをアップデートしたいという想いから、2021年3月に「3L museum」を開設。牛乳キャップやチロルチョコの包み紙など、芸術的価値があると感じるモノの蒐集が趣味。




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