観察力を鍛えるワークショップ Vol.3

こんにちは!
教養派アート入門メディア『3L museum』を運営している、白くま館長@3Lmuseum)です。

観察力を鍛えるワークショップへようこそ!

今回のワークショップでは、なんだかリラックスしたような雰囲気のある作品を紹介します。
発見がたくさんある作品なので、気になった所はどんどんアウトプットしていきましょう!

3L museumのワークショップとは?

所要時間は約5分です!

また、このワークショップは次のものを必要とします。
ありあわせで大丈夫なので、読み進める前に手元に用意しておいてください!

・文字が書ける紙
・鉛筆・シャープペン・ボールペンなど

目次

作品を見てみよう!

それでは、今回のワークショップで使用する作品の紹介です!

所蔵:シカゴ美術館

まずは2分間で「アウトプット鑑賞」をしてみましょう!
作品を見て「気づいたこと」や「感じたこと」を自由に書き出してみてください!

あなたは気づいた?サクッとチェック

ここでちょっと難易度の高いチェックポイントを紹介します! あなたは気がつきましたか?




どこからそう感じた?

次は自分の感想の中から1つ選んで、「どこからそう思ったのか」を深掘りしてみましょう!
より鮮明に観察することができるようになります。

例を挙げると以下の通りです。

「みんながくつろいでいて気持ち良さそう!」
→公園のような場所でみんながピクニックのようなことをしていて、暖かくて気持ち良さそう。でも、なんだかぼんやりしていて少し暗くも感じる……?

・「なんだか違和感を覚えた」
→すごいリラックスしていることは伝わってくるのだけれど、人がたくさんいるわりに静かだし、なんか冷たい印象を感じる?

ぱっと頭に浮かぶことで大丈夫です。それでは気楽に1分間でやってみましょう!

この作品はどんな作品?

深掘りお疲れ様でした。少し頭を使って疲れたと思います。
ここからは、何かぼんやりしたこの作品について解説していきます。

これは「グランドジャット島の日曜日の午後」という作品で、フランスのポスト印象派の画家であるジョルジュ・スーラによって1886年に制作されたものです。

館長

ポスト印象派とは、光の変化などの日常の一瞬を切り取ったような印象派という芸術運動が起こった後に活躍した画家たちを指す呼称です。

この作品の舞台はセーヌ川沿い。
休日をグランドジャット島という当時のリゾート地で余暇を過ごす人々を描いた大作です。みんな暖かい木漏れ日の中でのんびりしていますね。

日陰に人が集まっていることから、この日はむしろ暑い日であったのでしょうか?
木陰にいる人もいれば、日傘を差すことで紫外線を回避している人もいます。この時代からすでに日傘は存在していたんですね!

絵画を鑑賞していくことで当時の人々の日常や生活の雰囲気を知れて、なんだか自分もそこにいたんじゃないかという懐かしさを感じませんか?

ちなみに、画面右手前の男女は不倫関係にあるとされています。

なぜ、そんなことがわかるのでしょうか? ヒントは男女の足元にいる
猿はヨーロッパにおいて悪徳の象徴とされており、この猿がいることで、2人は不倫関係にあるということを表現しているのです。

このように、ある物や生き物が意味を暗示するために意図的に描かれる、いわゆる隠れメッセージ的なものが絵画ではみられます。このメッセージを読み解いて、絵画の意味や描かれた人物を特定するなんてこともできますよ。

また、実は表情を確認できるのが中央の白い服の少女のみ。もしかすると、この絵は少女の視点で描かれる人々の日常なのかもしれません。

隠された意味があると思うと、なんだか絵画鑑賞がワクワクしてきませんか?

そして注目するポイントとして、ぼんやりした雰囲気になっている点があります。

これは、『点描技法』という技法が生み出した世界ともいえます。
点描技法とは、線ではなく一つひとつの点を用いて絵画を描く技法です。今でいうとドット絵やコンピュータグラフィックが近いかもしれません。

ちなみにこの絵画のサイズはおよそ2×3m。一点一点を描いていたと思うと狂気じみていますが、これがスーラの真骨頂であり、幻想的な世界を生み出している要因なのです。

この技術に加えて、全員が無機質に左を向いている、直立不動の同じポーズ、ほとんどの描かれた人間が動いていないという要素があることで、人がたくさんいるのにまるで時が止まっているような静かな印象を覚えるのです。

この作品をあなたはどう思う?

では最後に、この作品を観てあなたは今どう思いますか?

作品をよく観察し、背景を知ったあなただからこそ出てくる感想がきっとあるはずです。
自由に書き出してみましょう!

ここでほかの人の感想も紹介させていただきますね。

「ぼんやりとした雰囲気の理由が知れたり、点で描くという方法があったり、新しい世界をしれたような気がします。その作品の理由や技術に一層興味が湧きました!」

「猿が描かれた理由になんだか日常に潜む闇を感じました。絵画鑑賞は油断大敵なのかもしれません……」

まとめ

お疲れ様でした!今回は、暖かくて幻想的な世界観のある作品を紹介させていただきました。

技法や描かれているものに注目してみることで、新しい世界が広げることができたでしょうか!

視野が広がることで、その分発見が増えて新しいアイデアを生み出すことができます。
色々なことに気づくことや、深く考えてみることは様々なシーンで役に立つと思います!

なお、今回使用したこちらの作品は、以前ワークショップで紹介しています。

こちらでは作品に対しての初見の感想などを紹介しているので、参考にしてみてはいかがでしょうか!

ちなみに、対になる作品で、「アニエールの水浴」という作品もあるので興味のある方はぜひ調べてみてください!

以上で、今回のワークショップは終了です!

館長

なんだか公園でのんびりしたい気持ちになりましたね。笑

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この記事を書いた人

1996年生まれ。大学卒業後、美術館でナビゲーターとして教育普及に従事。教養としての芸術を広め、芸術に対する価値観やイメージをアップデートしたいという想いから、2021年3月に「3L museum」を開設。牛乳キャップやチロルチョコの包み紙など、芸術的価値があると感じるモノの蒐集が趣味。




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